阿波女あきんど大賞受賞者インタビュー VOL.2
阿波女あきんど大賞とは、徳島の地域経済の活性化と女性の社会進出を支援するため、徳島市が各業界を代表する女性経営者とともに結成した「阿波女あきんど塾」が、阿波女の知恵と活力をいかし、徳島の経済活性化のため、活発に経済活動に取り組み、挑戦し続け、活躍している女性を応援する事業です。
女性の視点でプロジェクトの推進、商品開発等に取り組む経営者を表彰する「経営者部門」、女性が働きやすい職場環境の整備を行い、継続した意識改革を自社に対して働きかけている個人やグループを表彰する「個人・グループ部門」の2つを募集・審査しました。
2023年はSDGsが目指す「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて取り組む2人の女性が表彰されました。
障害にまつわる絶望を希望に変える
おやこを照らす光に
障害のあるお子さんを育てながら、フルタイムの仕事を辞めざるを得なかった体験から、同じような境遇にある人をサポートする療育施設を作ろうと2018年11月に起業した太田さん。2022年4月1日には『ゆずりは保育園』を開園し、障害のある子もない子も必要な支援を受けながら、同じ環境で過ごすインクルーシブ保育を行っています。
現在、児童発達支援事業所「おやこ支援室 ゆずりは」、医療的ケア児や重度の障害がある子どもを預かる「ゆずりはplus」、徳島市の認可保育園「ゆずりは保育園」と「リラクゼーションサロンゆずりは」の4つの事業所を経営する太田さんに、今後の活動についてお話を伺いました。
※療育施設立ち上げを目指すようになった経緯はクラウドファンディングサイト『READY FOR』で詳しく紹介されています。
ケアが必要な子どもたちの行き先、預かり先が足りていない
日本の保育の現状
太田さん 新生児救命救急医療の発達に伴い、今まで生きられなかった命が救われています。これは非常に嬉しく、ありがたいことですが、医療の進歩に保育環境が追い付いていないのが現状です。ケアが必要なお子様の行き先、預かり先が日本に足りていないと感じています。
----そうした中で障害児支援に特化した『ゆずりは保育園』は全国でも珍しい施設ですね。
太田さん 園内には認可保育園と医療的ケア児や重度の障害のある子どもを預かる施設があり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などによるリハビリを保育園に通っている間に受けることができます。また、子どもたちが小学生になっても利用できるよう、放課後等デイサービスも併設しています。
----保育園で過ごす子どもたちはどんな様子ですか?
太田さん 兄弟どちらかに障害があって「同じ保育園に通わせたい」とか、「家から近い」などの理由で障害のない子も通っていますが、みんな仲良く過ごしていますよ。幼い頃から多様性に触れながら成長できることに魅力を感じていただいている親御さんも多いですね。
変化を受け入れ、チャレンジを続ける社風
医療・福祉従事者が集まるエステサロンも開業
----『株式会社ハビリテ』の社員は、ほとんどが女性で、障害児ママも多いと聞いています。
太田さん そうですね。そうした意味では共感力もありますし、お子さんたちへのケアも手厚いです。結束力もあり、プロ意識の高い人が多いように思います。
----そういう雰囲気は自然と培われていったんですか?
太田さん 自然と醸成された部分もありますが、今は社風として掲げているものがあり、それに沿った採用を行っています。変化を受け入れ、チャレンジすることを大切にしています。
----チャレンジと言えば、2022年11月にエステを開業されたのは意外でした!
太田さん うちのスタッフは全員、「死ぬまでにやりたい10のこと」を書き出し、掲示しているんですが、「エステに行きたい」という夢がめっちゃ多くて。興味はあっても一歩踏み出せない人が多いんだな、と。
リラクゼーションサロンゆずりはInstagram
----エステ事業、かなり喜ばれたんじゃないですか?
太田さん これまで新規事業をするとなると、「えー⁉ ゆっくりやりましょう」みたいな反応だったのが、みんな前のめりで。「いつですか?」「早くやりましょう!!」って(笑)。社員のみんながやりたいことを叶えていくことで自社の発展にもつながるし、モチベーションアップにもつながるし、いいことずくめだなと思いました。
----社員のケアにも気を配っているんですね。
太田さん エステ開業にはもうひとつ、リクルート機能も持たせたいと思っていて。医療や福祉従事者の方がそれを証明できる何かを提示していただければ、施術料を20%オフにしています。そうすることで必然と医療従事者の方たちが集まり、『ゆずりは』のことを知っていただくことで、仕事に興味を持ってくれたらいいなという狙いもあります。
誰もが自分のやりたいことを
やれる社会を作るために
----太田さんは「まだこれができていない」と思われていることがあるんですか?
太田さん 保育と看護が一緒になった施設はないので、これをどんどん広げていきたいと思っています。保育園に理学療法士、作業療法士が配置できるようになるのが私にとってのゴール。そのためには法律を変えないといけないので、そうした働きかけも行っています。
---法律を変えるというのは、かなり壮大ですが、どうやって取り組んでいらっしゃるんですか?
太田さん たちまちは発信力の強化ですね。政治家の方との座談会に参加させてもらい、保育の現場における医療職の配置の重要性についてお話したり、できることからコツコツ行っています。
---太田さんにとってこの数年、お母さんから起業家へと激動の人生を駆け抜けて来られたと思いますが、ご自身ではどう感じていらっしゃいますか?
太田さん すごく楽しいなと思っています。
---そうなんですね!
太田さん 他の人を見ていると、自分の可能性に蓋をして過ごしている人がすごく多いなと感じていて、自分のやりたいことに本気で打ち込んだら、人生もっともっと楽しくなるのにな、と。うちの社員も含め、「自分のやりたいことをやれる社会にする」というのが私の目標。誰もが自分の人生を生きられるようにするためのツールのひとつとして、保育園があると捉えています。
----障害のあるお子さんを育てている親御さんは生活が子ども中心になってしまい、“自分の人生を生きる”ことがどういうことなのか、よくわからなくなっている人もいるのではないでしょうか?
太田さん そうですね。私は「何のために生きているのか?」「何のために事業をするのか?」を、トコトン考えました。その答えとして「私が死んでも息子が一人で生きていける社会を作る」というのが大きなモチベーションになっています。その過程によって人の役に立てているというのがやりがいにもなっていますし、事業を通して親御さんの声を聞くことで、これまでの苦しかった自分を癒やすことにもつながっていて、全部が絡まり合って今があると思っています。
----自分自身を見つめる時間が必要なのかもしれませんね。
太田さん 障害や病気ってすごく身近なもの。いつ交通事故に遭うかもしれないし、介護が必要になるかもしれない。時間は有限です。もし1年後、寿命が尽きるなら何をするか?そう考えたときに何をするか。考え抜き、言語化することでその人の生き方や目標が見えてくるかもしれませんね。
株式会社ハビリテ https://habilite.hp.peraichi.com/yuzuriha/
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